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我々は多くを失った  もはや取り戻すこともないだろう
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世界の全てが裏返る





ニトロプラスの18禁ADV「沙耶の唱」を遊びました。
価格は2000円ほどの中編ノベルです。初出は2003年とのこと。
一言で言うと面白かったです。名作と呼ばれるのも妥当かと思いました。
SF要素がありますが、そのあたりの説明が丁寧でストーリーが分かりやすいのがいいですね。


当記事はネタバレを含みます。

 










主人公の郁紀は、事故の治療後から身の回りの全てが肉のように見えてしまいます。
視覚だけでなく、触覚・嗅覚・味覚・聴覚とその五感の全てがことごとく狂ってしまい、日常がまるで魔界に居るかのような状態に変貌してしまいました。

 

 

郁紀には親友もいて、想いを寄せてくれる女性までいたのですが、事故の後はそんな関係は崩壊してしまいます。
何しろ見た目が肉塊ですし、喋る言葉も奇怪なノイズのようなものです。
友人たちがどれほど郁紀を気遣っても、郁紀には嫌悪感しか生まれないのです。
友人からしたら、心配して話しかけているのに汚物を見るような目で見られたらたまったものではないでしょうが。

 

結局、郁紀の苦しみは本人にしかわからないのです。
この部分に、「本人」と「他人」の越えられない壁を感じましたね。

 

そんな中、郁紀の唯一の希望となったのが沙耶でした。
狂った世界の中、沙耶だけは唯一まともな人間の姿をして郁紀の前に現れたのです。
郁紀は、我々の良く知るような「日常」を避け、沙耶との二人だけの世界を凄そうとします。

 

肉塊を塗りつぶすように壁にペンキを塗り、唯一おいしく食べられる■■の肉を食べ・・・。
変わってしまった郁紀にはそれが普通だったのです。それが正常な人間からどう見えようと・・・。

 

郁紀が沙耶と出会えたことは本当に奇跡的でした。片や日常の全てが裏返った青年、片や人間の愛を求めて彷徨う孤独な来訪者。
世界中探してもお互いに代わりのいない、正にベストカップルです。
二人の愛には障害も多く、実際星ごとプレゼントされるのははた迷惑極まりないのですが、思えばファンタジー世界では愛の力で世界を変えるような事はしょっちゅう起きます。
負のカップルである彼らにもその権利があって当然でしょう。
やはり愛の力は偉大だ、ということで・・・。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


プレイ後に、沙耶が「ニトロプラスブラスターズ」でプレイアブルキャラとして戦う様子を見て、何とも言えない気持ちになったとか。

 

 

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