ネットには多くのフリーゲームが溢れている。
フリーゲームは「無料」というその特性上、『無料なんだからどう作ったって文句ねぇよなぁ!?』という意識が作者に働き、良く言えば個性的、悪く言えば不親切なゲームが生まれやすいということが、大きな特徴であり最大の魅力でもある(と、思う)。
今日紹介する「落葉の大地を走れ」もそんな特徴を備えたフリーゲームの意欲作の一つだ。
ジャンルはADV色の非常に強いRPGで、どこまでも自由度の高いシステムとストーリーがウリ。
ちなみに「らくよう」ではなく「おちば」と読む。
暗闇行灯というサイトで公開されたツクール製のPC用フリーゲームである本作は、その特異なシステムとバグの多さでプレイする人を困惑の渦に叩き込んだ。
俺も数多くゲームをプレイしてきて、傾いたシステムのゲームも数多く見てきた(ロシアンルーレットを回すだけのゲームとか)。
だが、そんな俺でも本作では驚くことばかりだった。まず使われているツールからしてまともではない。
「落葉の大地を走れ」は2014年12月3日に初公開されており、割と最近のソフトのはずなのだが、使用されているツールはツクール2003となっている。
ツクールVXでもなくツクールXPでもなく2003!古い!10年以上も前のツール!
そのおかげで本作は初めから避けようもなくグラフィックバグが発生する。
文字の色が化けるのは日常茶飯事。
基本的に「何かしながらメニューボタン」を押すとバグる。
進行には影響が無いので気にしなければ問題無い。
プレイしたての人をことごとく不安に突き落とす罠である。
俺もプレイ開始直後は「うわーなんかバグってるよ。やっぱり古いソフトはうまく動かないのか」とか思っていた。
実際は全然古くなかったわけだが・・・。
まず見た目でプレイヤーに先制パンチを喰らわせた次は、常識を飛び越えたシステムが襲い掛かる。
本作には「時間」の概念があり、朝→昼→夕→夜の順に日が進んでいく。
このシステムを活かす為に町などに時間限定のイベントが多く配置してあり非常に丁寧なのだが・・・問題はその時間を進める方法。
本作の時間は主人公のHPと連動しており、HPが減れば減るほど日が傾くという仕様になっている。
HPはバイトをしたり戦闘で傷を負ったりすると減るので、もし「時刻を夜にしたい」と考えれば、まずバイトをして時刻を夕方まで進めた後、戦闘で死なないギリギリまで傷を負わなければならない。
・・・って、なんで体の傷と時間の経過が連動するんだよ?
一般的には時間なんてただ待っているだけで過ぎていくものなんだが。
このおかげで、「時間を進めるために敵を探す」「時間を夜にしようとして傷を受けすぎて死ぬ」等の意味不明な状況が発生するのだ。
常識を常識とも思わないシステムには驚くほかない。
これ以外にも、
・オートだと使った材料も作った料理も表示しないので何を食べてるのか不明な料理システム(せっかく材料も調理器具も豊富なのに・・・)。
・寝る度に唐突にランダムで発生する回想イベント。
・崖を往復するだけで際限なく上がる登山レベル(その気があれば序盤でMAXにすることも可能?)。
・なぜか町の中でしか確認できない曜日システム。
・本作のMPは行動力という扱い。地図を開く、猫を抱き上げる、歩く等の行動で消費される。ただMPが0になっても大きな問題は無いので安心。
・序盤の金策は実家で寝食しHPMPを回復しつつ町まで出てバイトといういやに現実味ある方法。
などなど、不思議なシステムが満載だ。
・・・あれ?なんだか全然褒めている様に見えなくなってしまった。
まあ実際いろいろ戸惑う所があるのは確かなのだが、それも作者の頑張りゆえに生まれたもの。温かく受け取ってあげるのがゲーム好きの在り方というものだろう。
じゃあこのゲームどこが面白いの?という話に移るが、ずばり「謎解き要素」!これに尽きる。
「落葉の大地を走れ」の主人公であるフォン君は生まれつき言葉が喋れないので、ゲーム中は人語を話すネコ「マオ」と同行し他人との会話をしてもらっている。
マオには言葉を一つだけ自由に指定することが可能で、町人と話した時にその言葉について知っていることがあれば教えてくれるようになる。
例えばマオに「ネコ」と指定しておいて、特定の人に話しかけると、ネコに関する特別な情報を話してくれる・・・といった具合だ。
古いコマンド入力式ADVのシステムに似たところがあるな。
このシステムを利用して情報を集め、謎を解いていく楽しみが本作の肝だと思う。
自分の頭で情報を整理・推察し、反応のありそうな言葉を一つずつ試していく。
こんな遊び方が出来るRPGはこれまで無かった。この部分は本当に面白いんだよな。難易度がクソ高いけど。
ただ一つ問題なのは、この質問システムをプレイヤーにあまり分からせようとしているように見えないところ。
それどころかシステムの紹介の時には「使わなくても問題ないです」みたいに書いてる始末。
実にもったいないぜ。せっかく面白く作ったんだからもっとセールスしていかないとさぁ・・・。
・・・と、思わなくもないが、もしかしたら「やる気のある人がより楽しめるように」という配慮なのだろうか?
積極的に質問システムを試すようなやる気のある人が、よりゲームを楽しめるという。
言われて試すよりも、自分から試したほうが思い入れも強くなるから、と。
まあそこまで考えているかどうかは知らないが、何にせよ「不親切」と「奥深い」は表裏一体。
本作はとても俺ごときの常識では測れない、数々の謎の先に途方も無い広さの深遠を覗かせるような、そんな不思議な作品である・・・と、俺は感じたわけだ。
そんなソフトがフリゲ2015で10位タイってんだから、みんなの見る目の鋭さには驚くぜ。
俺にはとても万人受けするソフトには見えないのだが、俺もまだまだ未熟だな・・・。
【今日の買い物】
パッケージ版の「幻想人形演舞」と「幻想人形演舞ユメノカケラ」買ってきたぞ。
やはりパッケは良い・・・。この充足感はDL版じゃあ味わえない。
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